無事是貴人 −− 人生の成功者は自然体で生きている

無事是貴人

境野勝悟 作家・東洋思想家

まわりの評判とか、価値観とか、そういうものに振り回されていると、自分らしく生きられないんですね。私もこれまで随分無理をしてきました。ところが世間の価値に合わせなくなると、ごく普通に生きられるんです。自分にできることはできるし、できないことはできない。結局、自分として普通に、自然体で歩いていくことが一番心穏やかでいられるんですね。

月刊誌『致知』2014年8月号より

禅では「無事是貴人(ぶじこれきにん)」なんて言葉もございますけれども、無事というのは、安らいで、穏やかだということですよね。それが一番尊いというわけですが、あぁ普通に生きるってことはそういうことかなと。

同上

若くして著名な老師に教えを受けていた氏は、まだ若かったこともあり、老師に率直に「禅に生きるって何ですか」と聞いてみたことがあるそうです。するとその問いかけに老師は「君、それはな、ごく普通に生きることなんだよ」とおっしゃったそうです。また「ごく普通に生きることが難しいんだ」とも…。

当時はまだその老師の言葉にピンとこなかったそうですが、80歳を過ぎてようやく、あぁこういうことかなと思えるようになってきたとのこと。上の言葉は、そのことを語られたときの言葉です。

若いうちから周りの評判だとか世間の価値観だとかを全く無視して生きるというのも、それはそれで本当に理想的な生き方と言えるのだろうか、という面はあるかと思います。けれども、現代日本人の多くが抱えている病的なまでの精神の疲労は、多くの場合、周りからの評判だとか、世間の価値観だとか、そういった「自分以外の人たちの感じ方」をあまりに意識し過ぎているがために抱えている疲労なのではないでしょうか。

「普通に生きる」と聞くと現代社会人の価値観では「大学を出て、堅めの企業に勤めて、……」みたいな意味での“普通”を想像してしまう人もいるかもしれませんが、ここで言う普通とは要するに「ごく自然に生きる」という意味での「普通」です。

周りからの評判や世間の価値観をいくらか気にかけることは、社会の中で今まさに活躍している人間であれば、逆にそれがごく自然なことだと思います。ただ、それらに振り回されてはいけないよ、振り回されないでいれば自分らしくいられるよ、そしてそんな生き方ができている人は貴人だよね。……ということではないでしょうか。

自分らしく、ごく自然に生きること。言葉にすると簡単なようにも聞こえますが……そんな生き方ができれば、それこそが人生の成功者たる生き方、なのではないでしょうか。

 

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