通訳者 長井鞠子さんが語る「40年以上の経験から実感していること」

通訳者の長井鞠子さん

月刊誌『致知』の2014年8月号に、同時通訳の第一人者として有名な長井鞠子さん(71歳)のインタビュー記事が載っていました。長井さんは、歴代首相をはじめ世界中の VIP から絶大な信頼を寄せられている通訳者で、日本における女性会議通訳者の草分けとして、半世紀近くにわたり第一線に立ち続けていらっしゃる方です。

そんな長井さんが「40年以上、通訳として積み重ねてきた中で実感していること」として語られていたエピソードがありましたので、抜粋してご紹介します。

−−−−その頃から、歴代首相をはじめ世界中の VIP からの信頼を築き上げていかれるわけですね。

長井 だけど、やっぱりキャリアを積んできて、ある程度周りからも認められてくると、心に隙間ができてしまうんでしょうね。

あれはたしか40歳くらいの時だったと思うんですけど、あるシンポジウムで同時通訳の仕事があったんです。私が担当する人の原稿は40ページにも及ぶ長文でした。でも、その人の持ち時間は25分だったんです。だから、私はそれを見た時に、原稿通りには絶対読まないと思ったし、全く知らない話ではないから、ザーッと斜め読みしただけで本番に臨みました。いま振り返ると、それが甘かったんですね。油断していたんです。

−−−−といいますと?

長井 その人はどうしたかといったら、持ち時間なんて無視して、40分くらい喋ったんです。それも原稿をほとんど飛ばさないで、ものすごく早口で。その時の通訳は自分でも情けないくらい、大失敗に終わってしまいました。

後日、クライアントからサイマルにクレームが入りました。「長井の通訳はできていなかった」と。もうショックでしたね。それまでそんなこと言われたことがなかったから。

(中略)

あの大失敗でちょっとでも準備を疎かにしたらとんでもないしっぺ返しを食らうということを身に沁みて感じました。逆に万全を期せばいい結果が出ることが多い。ですから、あの日以来きょうまで、手を抜いた準備をしたことは一回たりともありません。

「準備と努力は裏切らない」。これは私が40年以上、通訳の仕事を積み重ねてきた中で実感していることです。

月刊誌『致知』2014年8月号より

驚くことに、いまだに自分で辞書を引いて勉強したりしているそうです。しかも会議前には単語帳をつくって専門用語を書き出し、その会議の重要なキーワードについてはそれがたとえ中学や高校で習うような簡単な単語であっても書き出しているとのこと。

さらに、英語だけでなく日本語も綺麗に喋りたいとの思いから、現在でも月に一回、言葉の教室に通っていらっしゃるとか。

その道40年以上のプロですらこうだと知ると、身の引き締まる思いがします。

長井鞠子

 

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