江戸のビジネス書が教える、裕福になるための処方箋『長者丸』。その成分とは

江戸のビジネス書が教える、裕福になるための処方箋『長者丸』

「貧乏とは病気のようなものだ」
と、とある資産家の方から聞いたことがあります。それを聞いた時は、なるほどそんな考え方もあるのかと感心するだけで、肝心のその病気の治し方を聞くのを忘れてしまったのですが。

でもたしかに、たとえば現代西洋医学では治せない糖尿病だの高血圧だのといった生活習慣病の類も、その病気の原因は普段の生活や心持ち(一般に「ストレス」の一言に要約されているもの)に原因があるわけですし。そう考えると、貧乏は病気だというのも、あながち単なる比喩表現として解釈していてはいけないのかもしれません。本当に、たとえば一種の生活習慣病なのかもしれません。

ということで、そんな一種の生活習慣病なのかもしれない貧乏という病気に対して、それを治して裕福にれる処方箋があるという、おもしろい話があったので紹介します。

田中優子(法政大学教授、江戸文化研究者)著『世渡り 万の智慧袋』から要約

この『世渡り万の智慧袋』は、江戸時代に大ヒットした井原西鶴のビジネス書数点の中から現代にも通じる学びの多い部分を現代語訳し、そこに著者独自の解説を加えてくれているものです。著者の現代語訳が実に読みやすく、また読者がすんなり読めるような配慮が素晴らしく、そしてさらに著者の解説もこれまた的確で素晴らしく、大変興味深く読み進めることができる本でした。

金持ちになるための薬

  • 裕福になるための妙薬「長者丸(ちょうじゃがん)」の調合は
    – 朝起き5両(10%)
    – 家業、つまり本来の仕事に励むこと20両(40%)
    – 夜なべ8両(16%)
    – 倹約始末10両(20%)
    – 健康でいること7両(14%)
    この合計50両を細かに砕いて、しっかり計画を立て、調合、調整に念を入れ、
    これを朝夕飲む。そうすれば裕福にならないわけがない

「働け!」のゴリ押しではない

意外なことに、よく働け!のゴリ押しではなく、むしろその「家業に励むこと」は全体に対して40%しか占めていません。それよりも「朝起き(早起き)」「夜なべ(≒勉強)」「倹約始末(≒無駄遣いをしない)」の合計の方が46%と、要するに生活態度や生活習慣の方が重要度が高いと、この長者丸の調合成分では示されています。

早起きして活動を始めるべし

朝起きとは、早起きして活動を始めろということです。サラリーマン社長にはあまりピンと来ないかもしれませんが、フリーランスや小規模事業者の方ならこれはよく分かると思います。ちょっと余裕が出てくると、つい人は太陽が昇りきったような時間に起きたりするようになってしまいがちです。そんなだらしないことしてちゃいけないぞ、ということです。

勉強や情報収集を疎かにするべからず

夜なべとは、夜遅くまで働けということではないそうです。教養を蓄積したり、情報収集をしたりしろということのようです。

倹約始末は、要するに無駄遣いをするなということのようです。無駄遣いはこの妙薬の効能を消してしまう毒でもあるといい、たとえば娘を好きなように遊ばせることだとか、息子にやたら習い事をさせることだとか、家業以外の何かに凝り過ぎたり、美食や淫乱を常とするようなことがそれにあたるようです。

いつの時代も商売においては信用が第一

江戸時代の商人倫理の根幹「倹約始末」

倹約始末は、江戸時代の商人倫理の根幹を成していたものだといいます。今では商売というと会社という形態をとることがほとんどで、トップがお客さんと直接触れ合うようなことは滅多にないので、いまいちその重要性が分かりづらかったりもしますが、倹約始末が大事だというのはつまり「信用が大事だ」という意味合いも強いようです。

無駄遣いで傾くのではなく、無駄遣いで信用を失うことによって傾いてくる

派手な身なりをして、豪華な食事ばかりして、家人には好きなように遊ばせ、余計な習い事ばかりさせ、仕事以外のことにうつつを抜かしているような、そんなことをしていたら信用を無くして商売も上手く回らなくなってしまうぞ、と。ただ単に無駄遣いは良くないという意味の他にそういう意味もあるようです。時代がどうであれ、商売においてはいかに信用というものが大事かということを、改めて認識させられます。

すべてが「信用」のためなのかもしれない

もしかしたら「朝起き」「夜なべ」にも同じような意味があるのかも、しれませんね。「あそこのご主人は朝早くからお働きになって、夜遅くに急用があってお訪ねした時もまだ何かしていらっしゃった」みたいな。そんな風に、お客さんから信用を得られるような生活リズムを保て、という意味合いも含まれているのかもしれません。

いずれにせよ、仕事に励むことも大事だけど、それ以上に生活態度や生活習慣はもっと大事だと。そういうことがこの、貧乏という病気を治すための処方箋『長者丸』の成分割合からは見て取れます。

以上です、
ではまた。

 

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