『Think unthinkable』- 江崎の黄金律

『Think unthinkable』- 江崎の黄金律

ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈さん(大正14年生まれ)の対談記事が興味深かったので、一部抜粋して紹介。

江崎玲於奈(物理学者)

略歴としては、昭和22年東京大学卒業。32年エサキダイオードにより量子力学的トンネル効果を実証する。35年にIBMのT・Jワトソン中央研究所に勤務。48年ノーベル物理学賞受賞。49年文化勲章受賞。平成4年に帰国し筑波大学学長に就任。現在は横浜薬科大学学長などを務める。著書に『オプションを活かそう』(中央公論新社)『限界への挑戦』(日本経済新聞出版社)など多数。

月刊誌の致知2014年4月号に掲載されていた、筑波大学名誉教授・村上和雄さんとの対談記事『研究の道は無限なり』から、特に興味深かった部分を一部抜粋して紹介します。自分の持って生まれた天性を最大限活かすにはどう生きたらいいのか。また物理学専門誌に「ノーベル賞を取るための5か条」「江崎の黄金律」として紹介され話題になった江崎さんのモットーも記事の最後に紹介しています。

自分の意思をもとに選択しながら生きる

これまで八十八年の人生の中にはいろいろなことがございましたが、その体験をとおして言えるのは、自分で自主的に物事を判断し選択しながら生きることがいかに大事かということです。

特に若い人には、自由な環境でいい選択をしながら、創造的な人生を送ってもらいたいと願っているとのことで、この「自主的に〜選択し〜」というワードが記事中でも出現頻度が高く、とても重要視されていることが感じられます。

逆境を招いたことが自分の弱点

逆境を乗り越えることを美談とおっしゃる方もいますが、私はそうではないと思う。逆境は避けるべきであるし、それを予知できなかったとしたら、それは本人の弱点ではないでしょうか。研究者もそうですが、あまりに逆境ばかりに身を置いていたのでは、何も生み出すことはできません。

家族の死や病気、戦争など自分の力ではどうしようもない問題は別として、例えば仕事の上で生きるか死ぬかというような逆境に立たされたとしたら、選択が間違っていなかったかどうか考えてみるべきでしょうね、と。

まあ実際のところいざその局面に立たされた時に「選択は間違っていなかったか?」なんて考えている余裕はないのでしょうけれども、それでも後になって振り返った時に「あの体験が良かった」「若者もああいう生きるか死ぬかの体験をしておくべきだ」みたいな考え方をしてしまうのは、もしかしたらその体験からの学びが足りてないのかもしれないですね。

後になって美談にするような誤魔化しをせずに、なぜ自分はあんな局面に立たされることになってしまったのか?どこがまずかったのか?ということをしっかり見つめ直さなければ、また逆境に向かうような選択をしてしまいかねないですもんね。

能力は、主体的に選択肢を活かし、天性を育成することによって生まれる

私は自分がそれほど優れた天性を持って生まれたとは思っておりません。しかし、天性を比較的うまく育成できたほうだとは思っています。大事なのは自分の能力を最大限発揮できる環境を、与えられるオプションの中に見出していくことでしょうね。

ほんとそうですよね。イチローだって、もし普通に生きていたら「あれだけの天性を内に秘めた、その辺にいる40代のサラリーマン」として生活していた可能性だってあるんですから。もしもたまたま、例えば学生時代に何らかの事件事故があってスムーズに大企業に入社することができなければ、もしかしたらその辺の中小零細企業で働いていた可能性だって、可能性としてはゼロじゃないんですから。

その仮想のイチローの、リアル版を、今現に生きている人だって世の中に絶対いるはず。いや、いて当たり前か。

持って生まれる天性も大事だけど、どんな天性であろうとそれをうまく育成することはもっと大事なんじゃないでしょうかね。

主体的にオプションを活かして自分が持って生まれた天性が育成され、そのことでタレント(能力)が生まれるのだと私は考えています。もちろん、自分が好きなことと天性が一緒だとは限らないわけですが。

「主体的にオプション(選択)を活かして」というのがポイントになるんじゃないでしょうか。よく言われる「積極的な思考」というのも、世間では「前向きな思考」という意味で解釈されている面がありますが、どちらかと言うとそうではなく「能動的な思考」「主体的な思考」という意味合いの方が本質に迫っているように思えます。

「この研究は面白いから、おまえやれ」

よく思うのですが「この研究は面白いから、おまえやれ」。そんな先生では駄目です。誰かが面白いと気づいた途端、本当の意味で面白い研究ではなくなるからです。そうではなく、その人が自分で面白いと気づくことができる環境を整えてやるのが指導者の役割ではないでしょうか。

教えるのではなく気づかせる。どの世界の師弟関係においても共通のことのようですね。

考えられないことを考えろ

私が若い人に言いたいのは「Think unthinkable」、考えられないことを考えなさいということですね。

この考え方が、例えばエネルギーが粒子状態になっているという、想像を絶するアンシンカブルなことをプランクが考え出す元になり、それが古典力学を超える量子力学の発展に繋がったとのこと。またそういった例から分かるように、将来というものは必ずしも過去の延長線上にはない、とも。

江崎さんが勤められていたIBMには「Think」という標語があちこちに掲げられていたそうです。考えて考えて考え抜け、という社員の心得として。またアップル社のスティーブ・ジョブスも「Think different」、つまりただ考えるだけではなく、違ったことを考えろ、と言っていた。これらを受けて江崎さんが若い人に言いたいと思うのが、上の「Think unthinkable」だそうです。

ノーベル賞を取るための五か条「江崎の黄金律」

江崎氏が1994年に国際会議で話した内容を、それを聞いていたノーベル物理学賞の選考委員がスウェーデンの物理学専門雑誌に『江崎の黄金律』として発表したことがあるそうです。

1.いままでの行きがかりにとらわれない
2.教えはいくら受けてもいいが、大先生にのめりこまない
3.無用なガラクタ情報に惑わされない
4.創造力を発揮して自分の主張を貫くには闘うことを避けてはならない
5.子供のような飽くなき好奇心と初々しい感性を失ってはいけない

この5つは江崎氏のモットーであるとともに、氏が日本に創造の風土を醸成するための心得としていることでもあると言います。

以上です、
ではまた。

 

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